真の芸術家 フリードリヒ・ガストによる序章

コンピューターは役に立たない。答えを出すだけだ。」
パブロ・ピカソ


 
人生と宇宙に関する問題の答えは42あると、指導的な西欧の科学者は長らく信じてきた(研究者によっては48)。

たが、これまで正確な答えがなかった問題がひとつある。それは対応する固有の問題は何かという問題だ。

このジレンマは世俗的世界であるエンタテイメント・エレクトロニクス世界にもある(あるいは、それに反響しているとい
ってよい)。設計開発技術者は、より完璧な測定結果を求めて、また驚くべき原理の発見、より印象深い数字を求め
て全力をあげている。
だが新しい答えの懸命な探求に取り掛かる以前に、なにが問題かという問題が忘れ去られている。

喜ばしいことに、デンマークの小さなメーカーが、われわれの存在の意義を問題にしてはいないものの、それでもラウ
ドスピーカーの意義についての問題を正しく提起しているのだ。




スピーカーは真実を語ってくれるか

禅師のハイセン・ツシマルは、それぞれの問題の中にすでに答えが内包されていると指摘している。

まさにこれ以上ぴったりした指摘はない。問題意識が正しければ(「このスピーカーのサウンドはよいか」というよく聴
かれる質問と比較考慮されたい)、問題は全くひとりでに解決されるのだ。

芸術は、真の、誠実な実行にのみ、もっぱら存在するのだ。

手工芸品でも良いものと悪いものとに別れ、芸術品にまで高められるものもあれば、最低の低俗品に成り下がるもの
もある。




真実にも違いがある

物事の真実は、本質的なものに集中することにある(例えば、自動車は走行するものであって、しゃべるものではな
い)。

真実は、この本質に到達するための労を惜しまないことにある(例えば、スイスに住んでいる時計職人が多い)。
真実とは、この目的達成のための対価が何の役割も果たさない事だ。

真実は、こうあってほしいと望む通りに物事ができあがることだ。

ここにお届けする「真実の書」は、真善美の普及に寄与するものだ。

 
「無為は宇宙の平和を促進する」と、ある米国の詩人は語った。皆様の真実のラウドスピーカーを前にして、多くの無
為の時間を過ごされることを願うものだ。


In June 1993
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Dr.h.d.Friedrich Gerst,
Tregunter Hall, London