Contour 2.8の生みの親、フーゴ・ニールセン
資金がもっと必要になったからといって、ラウドスピーカーを増産することはしない。
値上げをするだけだ。
毎月、何十万というボックスを生産している企業がある。売れ行きがよければ、出来高払いで生産に乗り出すのだ。
真実を愛するデンマーク人にとっては、このようなやり方は思うだけでも精神的ショックを受ける。
ディナウディオでの年間生産台数は3万にも満たない。これは、我々の品質に対する考え方に基づいている。
品質は金よりも貴重であることは明白だから、必要があれば増産ではなく、値上げをお願いすることもある。これは、
工場の従業員にも好ましい影響を与えている。
20年以上、スピーカー作りに専念してきた従業員が4人いる。10年以上は15人だ。
我々のことをふつうの工場などといわないでほしい。
むしろ指物師の仕事場だ。エンクロージャーを作っている14人全員が熟練の家具職人だ。
学校を出てからは「ベルト・コンベアー」という言葉を耳にしたことはない。
1台の機械から5秒ごとにエンクロージャー一式が作り出されることもない。
そうではなく、クヌード・エリク・フェーバーが3日をかけて鋸を引き、切断し、サンドで磨き、化粧張りをして、やっと
Conseqenceが1できあがるのだ。(天気が良ければ、Contour2.8はこの半分でできる。)
だが、自分が途方もない仕事をやったことが後になって分かる。スピーカーは世界でただ一つしかないもので、製作
に使用される木材は極めて高価なものなのだ。
環境に優しい膠の使用は、機械ではなく人間が仕事をしている職場では、まさに当たり前のことだ。
だが、木材に対する気配りは当たり前のものではない。
フーゴ・ニールセンは、長期間貯蔵されている木材から、スピーカーのペアにぴったり合ったものを探し出すのだ。
最後の組立行程まで、このペアが分離されることはもうない。
このように、皆様の居間に置かれた左側のスピーカーが、まさに右側のスピーカーの正確な鏡像になるよう細心の注
意を払っているのだ。
お隣のシュレーダー博士のスピーカーのように、双子の兄弟になることはないのだ。
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