細かい装置がぎっしり詰まったリスニング・ルームで正しい判断を下すのは簡単ではない。
音響学的理由からだ(すべてのものが共鳴または反響する)。
聴覚生理学的理由からだ(表面的な差は聞き取れるが、質的な掘り下げはできない)。
そして心理学的理由からだ(説得され、あれこれ吹き込まれる)。
もちろん、真実を愛するディナウディオのディーラーは、この問題への対策を講じてくれることは確かだが、それでも皆
様が不安を感じられる場合の対策は次の一つしかない。
選び出したスピーカーを自宅に持ち込むこと。
専門店は喜んでお手伝いするだろう。そこで、じっくり腰を落ち着けて、ひたすらよい音楽を聴くのだ。
静寂と安らぎの中で、スイッチをあちらこちらに切り替えないで、その後、次のスピーカーで同じ音楽を聴くこと。
その際、目を閉じて聴くのが最善だ(目が注意を向けるのは常にスピーカー・ボックス自体であって、サウンドではな
いことは自明だ)。
そこで品質の本質が把握でき、専門的評論家よりも確実な判断ができることになる。
リスニングが完了した段階で、今度は一晩じっくり考えるのだ。
その上で、以上の全部を繰り返すのだ。
最初聴いたときには魅力的なサウンドを出すスピーカーでも、しばらく時間をかけて聴くと、弱点が明らかになるもの
が多い。
攻撃的で、単純で、ぼやけた低音。甲高い高音。存在感がないなど。
優れたディーラーならば、週末にかけて皆様に聴いていただくため、テスト・モデルを自由に貸し出すだろう。
真実が明らかになるには、多少の時間がかかる。これは現実の人生だけではなく、スピーカーの場合も同じであるこ
とをディーラーは知っているからだ。 |