ONKYO CR-N755(S)/(B)試聴記
レポート:吉田 H24.9.26

定価 59,850円(税込)

ONKYOお得意のコンパクト・レシーバーの新シリーズの登場です。
前作、CR-D2が非常に良く出来ていたため、今回のモデルはどうかと言うお問い合わせが多く、
今回、ご要望にお答えする為に製品比較を行いました。

ニューCRシリーズは、前作の様なリミテッドモデルがありません。
将来的に出る可能性もありますが、今のところ価格設定、筐体の作りから、旧CR-D1、
次作のCR-D2(S)の後継的な色合いが強い様です。

そこで今回は、主にCR-D2(S)との比較と、今回出ましたCR-N755の下位モデルのCR-555との
比較を行っています。

モデル名 アンプ増幅方式 出力  歪み率
CR-555 3段インバーテッドダーリントン回路(アナログアンプ) 22W x 2(4Ω) 0.4%
CR-N755 3段インバーテッドダーリントン回路(アナログアンプ) 22W x 2(4Ω) 0.4%
CR-D2(S)  VL Digtalアンプ(PWMデジタルアンプ)  40W x 2(4Ω)  0.08%

まずは肝のパワーアンプ部分、スペックありきと言うのは、吉田苑の趣旨(あくまで吉田苑なりの音の評価が基本)
に反しますが、まったく無いよりも比較も分かりやすいと思いましたので記載しています。
ニューCRシリーズは、ONKYOのリファレンスシリーズのパワーアンプにも積んである、
3段インバーテッドダーリントン回路を搭載したアナログアンプを採用しています。
前作CR-D2(S)で使用されたVL Digtalアンプ(PWMデジタルアンプ)から、アナログアンプに変更されています。

ONKYOの技術の方と話す機会もありましたので話を聞きましたが、
今回のアナログアンプの搭載については、CR-D2(S)に搭載された、VL Digtalアンプ(PWMデジタルアンプ)は、
このシリーズ中では、CR-D2(S)の上級モデルであるCR-D2LTDで完成の域を見ていますので、
ニューシリーズでは、リファレンスシリーズで養ったアナログアンプの技術を惜しみなく投入し、
新しいCRシリーズとしての完成を目指したそうです。

単純に出力と歪み率の比較だけ行うと、スペック的には前作と比べ後退した感じがありますが、
実際の音質比較、試聴に関しては、前作のCR-D2(S)と比較しても劣るものではありませんでした。
アナログアンプとデジタルアンプでは、持ち味(得手不得手)が違いますので、
それぞれの特徴を生かした音の作りになっています。

デジタルアンプのメリットは、高い変換効率で高出力が得やすく、音質的には低域のドライブ能力の高さ、
全体的な音圧(エネルギー)感の高さ、ダイナミックレンジの広さが上げられます。
デメリットとしては、CDの数十倍のスイッチング周波数(当社お勧めの1bitにいたってはSACD以上の
サンプリング周波数)を使用するため、発振によるノイズをカットする必要があり、
高域側にフィルターを入れる必要があります。
その為、変換効率は高いものの、アナログアンプに比べS/N比が取りにくい、フィルターによる音質変化等の
デメリットがあります。
フィルターのさじ加減ひとつでアンプの良し悪しが決まってしまうところもあります。

アナログアンプのメリットですが、S/N比が良い。高域特性は比較的得やすく、レンジの広いアンプが作れる。
作り手の回路設計の自由度が高い等が上げられます。
デメリットとしては、変換効率が悪い、極端な例ですが、A級アンプは低出力の割りに数百Wの消費電力を必要とするものも
存在します。高出力、馬力を得るのに、大きな電源が必要です。

以上の様に持ち味の違う中で、今回のニューCRシリーズではアナログアンプが採用されていますが、
この価格帯のレシーバーの中に搭載するには、異常と思える程のまともなアナログアンプが入っています。
ONKYOの製品ページに行きますと、ワイドレンジアンプ技術、WRAT(Wide Range Amplifier Technology)搭載
と書いてあります。
そのまんまなので、わざわざ略して書く必要があるのかと思いますが、(WRATと書くとかっこいいし、なんかすごそう)
ぶっちゃけそのまま、ワイドレンジなアンプを積んでいて、この手のレシーバーでは有り得ないディスクリート
(簡単に分かりやすく書くと、簡単なICを使ったパワーアンプでは無く、きちんと設計されてトランジスタ、コンデンサ等の
部品をしっかり使ったアンプ)で、設計されています。
ちなみに、競合価格帯のレシーバーの中身を数社見ましたが、ディスクリートで作られた本格的なパワーアンプは無く、
パワーIC(SANKEN等)が殆どでした。

ワイドレンジアンプ技術、
WRAT(Wide Range Amplifier Technology)搭載の
アナログパワーアンプ部。
3段インバーテッドダーリントン回路採用。
SPECTLAL、FUNDAMENTALのMhz帯域のアンプとまでは
行きませんが、レシーバーに内臓されてるアンプとしては、
相当な広帯域なパワーアンプを搭載。
NFB量も少なく、位相特性も良い。

各モデルのアンプの音質面の比較ですが、色々なソースで評価すると分かりにくくなりますので、
内臓CDプレーヤーで行いました。
CR-D2(S)は、ニューCR比べ低域の駆動力があります。低域はタイトで締まった感じです。
高域はニューCR二比べ、ややざらつきます。
比較しなければ分かりませんが、高域方向の繊細感、立ち上がりはニューCRの方が良く伸びて綺麗です。
バランスはいずれのモデルもニュートラルといえますが、ダイナミックな鳴り方でやや低域の方にシフトするのがCR-D2(S)、
おとなしいですが、繊細な音質でやや高域にシフトするのがニューCRになります。
ただニューCRでも555とN755では、少し違いがあります。
これは、付属の電源ケーブルや入力端子のメッキ等、細部の差といえますが、N755の方がやや力感を感じます。
いずれにしても、CR-D2(S)とニューCRのパワーアンプ部の素性の違いはしっかり出ていまして、
ある程度の中、大型のスピーカーまで想定するならCR-D2(S)の方が駆動力があり、
ニューCRシリーズは、良質なコンパクト2ウェイや中型トールボーイくらいまでをうまく鳴らしていくのが良さそうです。

次に、デジタル回路の部分です。
いずれのモデルもウォルフソン製の192kHz/24bit DACデバイスを搭載していますが、CR-N755には更にDSPを搭載し、
CR-555に比べ、USBメモリーの音楽ファイルの対応幅も広く、iPod/iPhoneのデジタル接続に対応、そしてネットワーク
プレーヤーも内臓しています。
特にDSPの効果が大きく、外部からのデジタル音源に対しての音質向上は著しく上がっています。
内臓DACとしては、かなりな高音質といえます。
CR-D2(S)ではデジタル入力は光ケーブルのみの対応でしたが、ニューCRでは同軸デジタルにも対応しています。
ちなみに内臓CDを使わず、同軸デジタル入力でPS-AUDIOのPWTと当社のデジタルケーブル烈風を使用して
CDを演奏してみましたが、非常に解像度も良く、PWTの持つ情報量を損なわずに出してきました。

ネットワークプレーヤーの音質も上々です。
内臓のCDプレーヤーよりも音質が良く、これならネットワークプレーヤーにも簡単に取り組めます。
それからN755は内臓DACの内容も音質も良さそうなので、PCにDDC(HiFace、X-DDC等)をつけて
同軸デジタルケーブルで接続して、PCオーディオの方も楽しんでみてはいかがかと思います。
別売リのアダプター使用で無線LANでの使用も可能ですし、USBメモリーの使用も含めDAC部分も
期待は出来そうです。

右がCR-555、左がCR-N755内部
CR-N755は、画像の真ん中手前に
DSPとネットワークプレーヤー基盤
(上下二枚基盤)が見える。

その他、もろもろですが、まず筐体はCR-D2(S)より後退しています。
CR-D2(S)では厚手のアルミサイドパネルを採用し、個体の強度も高く設計されていますが、
今回は曲げの薄い鉄板になっていて、筐体まではお金をかけた感じにはなっていません。

CR-N755、555の天板
薄い鉄板になっている。
CR-D2(S)のサイドパネル
アルミ材を贅沢に使用。
天板も厚みがあり、組み込んだ際の
全体の強度も上げてある。

CR-D2(S)では、ニューCRシリーズでは、FMチューナー内蔵でしたが、AM/FMチューナー内蔵となりました。
CR-N755ではRACプラグ、スピーカー端子は金メッキされている。
CR-N755では、電源ケーブルが3Pインレットの着脱式になりました。この部分はオーディオ的には特に大きな
意味があります。
当社の電源ケーブルや他社品を含め、電源ケーブルの交換が効くのは、音質チューニングの幅が格段に上がります。
ちなみにCR-555ではめがね式のインレットなので、ケーブルの選択肢が少ないです。

総評ですが、CR-D2(S)とCR-555はCR-555に機能面の向上はあるものの、筐体の出来も含め、
総合的には同等の感じかと思います。

CR-N755は内臓のDSP/DAC性能、電源ケーブルの交換可能な部分、入出力端子の金メッキ対応による総合的な
アンプとしての音質の充実、ネットワーク対応で、約10,000円の差しかありませんので、
お買い得感はCR-N755の方がかなりあります。

非常にまともな音質のレシーバーですが、目だった帯域を作ってわざと店頭効果を上げる様な音の作りにはなっていません。
しかるべきスピーカーでじっくりとじっくりと聴いていただければ、良質な音質という事がお分かりいただける内容かと思います。

改造についてですが、試聴の結果からCR-N755のチューニングモデルを出す予定です。
アンプの性能アップの為に、電源部にショットキーを使い、より高いS/Nの実現と、筐体の強化の為、
当社定番の高分子の制振材を使用、CDメカの制振も含め、全体のグレードアップを狙ったモデルを準備中です。