久々の更新です。
12月になったというのに今年はあまり面白いピュアオーディオの新製品ネタも少なく、何を書くか随分と頭を抱えてし
まった。
ハイエンドの世界もたいしてめぼしい物も出ていないし、国内大手はDVDオーディオとスーパーCDの話題ばかりだ
し、映像関連は元気があるようだが、いやはやなんともピュアの方は、、ソニーやパナソニックを筆頭に自社が作った 文化でも平気で破壊できる商業主義と、どっちつかずの中堅メーカー、カルト化していくガレージメーカーと、折角の趣 味の世界なのだからユーザーに配慮してもう少し普通に良い音が楽しめる商品を出して欲しいのだが。
気を取り直して最近試聴してものをランダムに選んで書きます。
スイッチング電源搭載のジェフのニューバージョン。以前のジェフのモデルと比較しても、更に随分涼やかな音になっ
た様だ。
情報量も多くどちらかといえば、アメリカのアンプの中でも綺麗な音を奏でるタイプ。
アルミくり抜き筐体の中に電源部分、パワー部分が別筐体で入っており、全体の重量の大半はアルミの筐体部分で
が占めている。
スイッチング電源採用のオーディオアンプは昔ヤマハ、ソニーのアンプが一時期作っていたが、音質が軽いとの評価
であまりはやらずいつの間にか無くなってしまい、一部の輸入品に見られるだけで主に業務用のパワーアンプで使 われるだけになっていた。
PAアンプ(業務用アンプ)の中では一般的で、大出力の省エネアンプが比較的安価で簡単にできるとの理由と思う
が多用されている。
ここに来て、輸入品のハイエンドアンプの中で、このような省エネ電源を持つアンプを見るのは、有る意味新鮮でもあ
る。
スイッチング電源に関しては効率がよいのはわかるが、今まであまり良いイメージも無かったので考えを改める時期
かもしれない。
それなりに効率も良いし、省エネで昔に比べると電源自体の質もかなり上がっているようで、やはり同じスィッチング
電源といってもPAアンプのような大出力でガンガンやるタイプのアンプとはまったく違い、きちんとしたハイエンドのオ ーディオアンプに仕上がっているのは立派だと思う。
他にも採用しているアンプは増えているのも事実なので時流なのかもしれない。
ただ、アンプに耳をつけてみるとわずかだが発信音が聞き取れる、結構耳に付く周波数なので気になる。
最もこのクラスのアンプを使う人が、聞こえるほど至近距離でこのアンプを使うとも思えないので、あまり考える必要
は無いのかもしれないが。
スーパーオーディオ対応がうたい文句の同社14SAに続く第2段、14SAほどの安定感はないがバイアンプにも対応
できるよう
別売りのパワーアンプSM−17SAが用意されており、将来いろいろな形での発展性は確保されている。
中域から低域にかけてはほどほどの厚みも有るし、現状のこの価格帯の中では良くできた方である。
欲を言えば14SAと比較すると若干スピードが落ちるのと、高域にかけての伸びが14SAほどは無いことだが、価格
が約半分で有ることを考えれば仕方ないかもしれない。
パワーアンプのSM−17SAの方は8オームのスピーカーに対して二台使用してのBTLが可能でこれも使うスピーカー
によっては効果的。
EK JAPAN TU-874 \39,800-(キット)限定生産
前回好評だったKT88を使用したTU-888の後継機。KT88を使用した真空管パワーアンプで、いつもながらキットとは
言えこのメーカーの商品はリーズナブルである。作りやすく丁寧な組み立て説明書付きで、半田さえ扱えればプラモ デル感覚で特性のきちんと取れたアンプが出来上がる。
前回のTU-888よりもSNが良くなり、より見通しが良くなった。KT88真空管が持つ音の厚みもそれなりにきちんと出
ているし立ち上がりも結構良い。
前回よりもレンジも広がったが、中域がしっかりしているので非常にバランスが取れて心地よく聴ける。
大型SP向きでは無いが、小型の2ウェイには良く合う。JBL系統や小型のシングルコーンにも相性はいい。
個人で作るととてもこんな価格でKT88のアンプは作れないし、情報量は高級アンプほどは無いのだが、国産の10
万円程度のアンプで質の悪い音を聴くよりも遥かにお買い得な商品である。
TU−875 \29,800-(キット)
こちらも好評だった真空管とFETを使用したハイブリッド・プリアンプTU-871のマイナーチェンジ版。
こちらもTUー874同様プラモデル感覚での組み立てが可能。前作と大きな違いはSNを向上させるために電源部分が
分離形になったことで、前作よりも更にすっきりした見通しの良い音になった。
基本的に同社のパワーアンプ用として開発されているが汎用性は高く、真空管プリアンプが使いたいが、いきなり高
額品は怖い方にはお勧め。
良くできた高額な真空管プリアンプほどの押し出し感は望めないが、輸入品の中にはたいした内容でも無いのに非
常に高い金額で売られているものも少なくないため下手な物を買うよりもよい。
ちなみにFETを使用しているのはフォノイコライザーの部分でMCヘッドアンプもFETが使用されている。
次回よりご要望も増えてきましたので、少しずつホームシアター関連も含めて書いていこうかと思います。
「この程度のワインでしたら決して贅沢な趣味ではないですよね」高名なソムリエの台詞である。確かに3000円く
らいのテーブルワインで済めば、ワインは安い趣味である。所が、ワインの初心者がよく聞くワインの名前ってどういう わけか30,000円前後なのである。マルゴー、シャンベルタン、イケムなど、ちょうどオーディオの初心者のよく聞く 名前が、マークレビンソンやJBL、タンノイ、ゴールドムンドだったりするように。結局趣味というのは金はかかるものだ ということなのだろう。「ミニコン買ってCDやMDを買っていればオーディオって決して贅沢な趣味じゃないですよね」っ てわけだ。
私がまだ高校生のころオーディオブームとやらが世界を襲った。その頃売れ筋のアンプP社のSA-8800とV社のSX
-3、セットにしたところで15万円に財布が届かない哀れな高校生は、金持ちの友人宅にそのセットを聴きに行った。 「こりゃ、ヒドイ!」どちらも中域の重さがあいまってボテボテのドタドタ。そのころ使用していた6インチのコーラルをラ ジカセに繋いでいた私が「勝った!」と思う位だった。貧乏な上に浅はかな高校生である。この趣味だったら貧乏人で もノウハウ一つで良い音が出せる。金の力になんか押し流されないと思った。大きな間違いだった。やはり、金は掛 かるのである。
しかし、金だけで済めば、問題は無いのである。先ほどの15万円のセットは極端な例としても、二千万もあれば最高
の音が聞けるわけではないのである。どうしても最低限のクールな耳、つまり先入観の無い正しい価値観を持った感 性と、ある程度の機械と電気の知識が必要なのである。人に聞かせるのではなく、ましてや人に見せるのではい。
(いや少しは見せびらかしても良いが)好みはそれからの話だ。人からけなされても「私はこんな音が好きなんだ」で
はもう救いようがない。確かに音の道楽はそれぞれに個性的な音を再生するから趣味なのだが、自分の耳で聞かず 雑誌の評価記事や怪しげな売り子の言葉を盲信してしまうようでは、漂流はまだこれからだということだろう。
さて、ワインの話の続きである。カベルネソービニヨンというワインがある。ボルドーで高い奴は目の玉が出る。
ところがこの葡萄は、カルフォルニアやチリでも生産されている。千円も出せば、お釣が貰えるようなものもある。勿 論、味はボルドーとは違う、そりゃそうだろう。ではまずいか?コストパフォーマンスから言えば信じられないくら いうまい。新しいカベルネを舌の上で発見できれば、である。23万円のワインと同列には出来ないが信じられないくら い安くてうまいワインがあるにはある、それは事実だ。しかしやはり三万円のカベルネを知らずにチリのカベルネの新 しい魅力を舌の上で発見できたかは、残念ながら自信が無い。ある程度の金額と確かな感性は、必要だということ だ。でなければ、アメリカを発見してもインドだと疑わなかった「無教養なイタリーの山師」と変わらない。
いつまでも勘違いは続く。
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「知らぬが仏」という言葉があります。知らぬ内は平静でいられるものが、真実を知ると平静ではいられなくなるといっ
たような意味でしょうか。
オーディオにおいてもしばしば使われる言葉です。これで十分と満足している人でもその上のものを知ってしまうと、
従来のものでは満たされなくなってしまいます。「聴かなければよかった」というやつです。現在のオーディオはコス ト・パフォーマンスが総体的に低いので、知ってしまっても庶民としてはなかなか手が出せません。そうなると、知らな いほうが幸せということになるかもしれません。中には「オーディオに真実はない」と諦めて(諦めたふりをして)、オー ディオを楽しまれる方もいらっしゃるようです。あえて真実から目を背け、「知らぬが仏」をされているわけですね。
何かを目指して進むとき、その先に光がないと張り合いがないものです。確かに今のオーディオに真実を見いだすの
は困難です。スピーカーから出てくる音は生の音とはほど遠く、飽くまで「スピーカーから出る音」でしかないものがあ まりにも多いからです。これは、再生装置のみならず、録音技術のレベルに依存するので、解決向上は簡単なもの ではありません。
でも、諦めてはいけません。スピーカーの存在を感じさせず、そこにその音の存在を感じさせてくれるものが、確かに
あるのです。まさにオーディオにおける「希望の光」的存在が。このような存在を知ることで、「やっても一緒」から、 「やればいつかは」になるでしょう。また、こうゆう物を知ることで感性が育まれ、物を選ぶ物差しの幅も広がるでしょ う。
さて、ここで「知らぬが仏」です。真実を知らずに(あるいは目をつぶり)、平穏にオーディオを楽しむの幸せとするか、真
実を目指して戦いながらでも一歩ずつ前に進むのを幸せとするか、これは全く個人の価値観によるもので、どちらが よいかなどというのは大きなお世話なのでいうつもりもありません。
でも前者は後者から見ると「裸の王様」なんですよね。
デジタルカメラを久しぶりに使ってみた。「すごい!」いいかげんな銀塩カメラは要らない位だ。もちろん今のデジカメで
は銀塩フィルムより画質が落ちる。レンズの交換が出来ない等と否定的な意見もある。しかし手形版程度のプリント に銀塩の必要性が感じられない。確かにハッセルブラッドで四つ切りとか、ライカM3のレンズのボケがとか言うあな たに薦めませんけど、一眼レフを買っていながら交換レンズを持たない中途半端な貴方にはオススメである。
新しい物が出てきた時は、必ず反対する保守的な意見を述べずにはいられない人がいる。カメラでは、オートフォーカ
スやオートアイリスが出てきては、論議が起きた。17年前CDが出てきた頃、CDは音が悪い、周波数が狭い、深みが 無い等と言いたい放題だった。
私が尊敬してやまないオーディオマニアに竹石氏がおられる。氏は早くからCDを導入されながらも持ち前の疑い深さ
で古くよりSPレコードの再生も守備範囲であった。氏のリスニングルームで聴いたビクター赤盤(国内録音アメリカプ レス)の宮城道夫のモロラル録音の音はカルチュアショックであった。楽器が一本、ということはモノラルのハンディが 減殺されているとは言え、その音の瑞々しさ、存在感の確かさ、ピチカートの活きの良さ、それは我々がLPという長 時間裏返さずに音楽を楽しめる便利さと引き換えに犠牲にした音ではなかったかという疑問を提示していた。我々は 色々なものを手放しながら前に進まなくてはいけないのだろう。
そこで、MP3の登場である。この手の新登場を無条件で受け入れ続けて来たイノベーター(お調子者)の私である。
なんたってMDだって既に四台目である。しかし、賛成できないのである。初めて新しい技術を否定しようとしている自 分に戸惑ってさえいる。新技術を否定した経験はある。似非4チャンネル(ディスクリート4CHは好き)ELカセット(誰も 覚えてないだろうね)VHD(磨り減るLD)全部論理的に否定できる。今度のは「なんだかイヤ」なのである。いや結論 は先に延そうと思っている。
我々は、また何を手放すことになるのだろうか。
DR-17のアナログ入力を試してみた、それなりにしっかりしている様で、前回書いた直接のデジタル入力と比較して
も悪くない。アナログプレーヤーからの録音も試してみたが予想以上に音も変わらず、高域方向の伸びが元の音から 比べると今一つという感じだがそれ以外にさしたる不満は出ない。
おまけでHDCDもかかるのだがHDCDを聴いてみるとこれもなかなかよく出来ている。
CDを聴く場合も録音機としての特性を重視した為か素直で、同社高級CDプレーヤーと比較すると若干見通しは悪い
が、あくまで高級機との比較なので価格と録音機能を考えると納得のいくレベルである。
本体の価格からして、録音性能とCDとしての出来のよさから結果としては合格点。お買い得である。
いきなり立ち上げ時から300人もいるような会社が、オーディオ分野に出来るのだから全くこのグループは凄いもので
ある。最もそれくらいの資本力が無いとF1に参戦は出来ないだろうが。
そのニューブランドの中では最もローコストに組めるアンプとCDがこのCD-20Rと後に述べるアンプの60i,60iRVなの
だが、それでも両方買うと実売50万円近くの価格になる。これでこの金額なのだからF1はいったいいくらするのかと 思っていたら、とりあえずスピーカーのF1が秋にはお目見えの様である。価格は300万円(セット)位するらしい。
ちょっと横道にそれてしまったが、元に戻して。CD-20RはフィリップスのCDM12.4メカを使った、比較的オーソドックス
なつくりのプレーヤーの様だが、音を聴いてみると立ち上がりもしっかりしていてハイスピード。情報量はそれほど多く は無いが位相回転も少ない。電源がそれほど強力ではなく重心はやや腰高な感じにはなるが、すっきりとしてストレ ートな表現は限られた中で出すところは出して、諦めるところは諦めるといった、思い切りの良い選択が伝わってき て、見た目以上に価格と音質はバランスしている。
アンプの60iRVは60iと基本は同じだがセパレートアンプとして使える様にフロントパネルにセパレート用のつまみがつ
いてくる、かなり使い勝手がよく簡単にプリやパワー部だけ使えるし、パワーアンプを足して簡単にバイアンプも出来 るようになっていてこのあたりの機能はよく考えられている。基本的な音の取り方はCD-20Rと同じだが、スピード感 はCDの出来と比較するとちょっと遅く、そのまま使うと価格の割にはと感じてしまう。足回りをオリジナルのものから ステンレス系の3点支持に変えてみて試聴してみると、スピードもあがりCDとのマッチングも取れるので、使い方次 第ではそれなりのアンプであることはわかった。
しかしそのまま評価すると4万円くらいはデザイン料と言った感じがして割高感がある。発展性を考えなければ、下位
モデルの60iでも良いようだ。因みにフロントパネルの色は2色シルバーとブラックがある。
両方をセットして聴いてみると、音場も適度に絞り込まれて小型から中型のトールボーイくらいのスピーカーには良く
マッチしそうな音ではある。しかし、アメリカもののスピーカーにはいまいちで、やはりヨーロッパ系のスピーカーに照 準を合わせたほうが間違いは少ない。
しかし、コンスタントに新製品を導入できるメーカーである。いまさらDYNAUDIOの説明は必要無いので省略するが、
DYNAかなりの自信作だそうである。
概観は従来のチェリーではなくバーズアイメープル、THIELのCS2.3のカタログによく出ている仕上げだが、さすがに
木工の盛んな国柄だけあって仕上げは非常に綺麗である。
ウーファーは従来のCONTOUR1.3MK2と同等の様だが、ツィーターは現行CONTOURシリーズによく使用されている
D260ではなく、D28/2のダブルマグネットでかなり強力な磁気回路になっている。今回大きく変わったのはネットワー クで、回路や定数はよく見ていないのだが、コンデンサは主にフランスのソーレン製で、コイルも今までの同社小型2 ウェイに見られない大型の空芯コイルが低域側にも採用されている。スピーカーターミナルもWBT製でYラグもすんな り入るし、インピーダンスも6オームとアンプ側から見た場合の使いがっても向上している。音質はストレスがなくスー と入っていける音、ともかく何も考えずに音楽に入っていける音。
デンマーク人はうそつかない、DYNAは真実の音と、まあ多少大げさな表現のような気もするがアンプやスピーカーそ
の他ケーブル、アクセサリーと、ともかくつないだ物の癖や持ち味をすんなり出してくる。本当に素直な機材と組み合 わせると、最初何の変哲も無い音に聞こえるので、物足りないかも知れないが、ほかのスピーカーに変えてみるとよ くわかる。大半のスピーカーはあくが強すぎて長く聴ける物は少なく、いつのまにかこのスピーカーに戻ってしまう。
すべての人に当てはまりはしないが、自分の部屋にひとつしかスピーカーがないと慣れ親しんで気がつかないことが
あるのかも知れないし、自分の持っているスピーカーに疑問はあっても頭で聴いて納得しているだけかもしれない。 量販店等の条件がそろわないところで試聴すると、ほかのスピーカーのほうが音にインパクトがあったり、現実以上 に綺麗になるものもあるので騙されるかもしれない。しかし音楽を聴く上で自分のシステムに疑問を持った時、聴い てみるとひとつの回答があるスピーカーには違いない。
薬の時代は、ライフドラッグから更にパーゾナルドラッグへ変わりつつあるそうな。アマチュアオーディオの世界は昔
からパーソナル。自分自身のために再生音を決めて行くのだから。でも忘れがちなのがメーカ側のパーソナリティ。相 も変わらず古い話で恐縮なのだが、マークレビンソンのデビューから話を進めよう。
最初の製品がJC-1だったと思う。懐かしきフォノイコライザーである。そして業界を震撼させたJC-2、あの薄いプリア
ンプである。この後LNP-2が発表され、こんなプリに釣り合うパワーがどんな形なのか、今考えれば熱かった時代で あった。
さてこの後、ビンソンのアンプは型番をMLで統一してくる事になるのだが、個人的にはJCシリーズは忘れがたい製
品である。「音楽が楽しい」と思わせる個性は、その無個性と思われる秀逸なスペックのどこから出ていたのだろう か?このJCは、設計者Jhon・Carlのイニシャルである。
メリハリだけでダイアトーンの黄金時代を作った佐伯氏、イタリア人であることラテン系であることを主張しつづけた、
アンプジラ、SUMO The GOLDのボンジョルノ。結局は個人の音楽の考え方が反映されてしまうものだ。
小さなメーカ自体だったら経営者の個性をそのまま反映されている物もある。アキュフェーズや昔のLUXは、代表的
な物だろうし、ALTECやJBLの古い価値観の偏った製品はJim B Lancingの音と言いきれる。全くオーディオにノウハ ウを持たなかったNECが二人の技術者によって小さな黄金時代を築いた例もある。A-10の山田氏であり、それを受 け継いだ鈴木氏である。この後、鈴木氏は会社を変えながらもその考え方は成長こそすれ一貫した製品作りを心が けている。不幸なことにあまり高価な製品を創ることが無かったせいで、ハイエンドの世界で話題に昇る事が少なく、 それが幸いしてリーズナブルな価格で美しい音が手に入る所以である。
吉田苑が彼の製品を紹介しつづけるのはそういう理由である。
最近ゴルゴ13を読んでいたら、バイノーラル録音がテーマになっていた。所でバイノーラルって知ってます?私達が
日ごろ使っているステレオというのはSTEREOPHONIC。STEREO=立体的なPhonic=響きで、対応する言葉は MONOPHONIC=一つの響き。そしてMONAURAL=一つの耳に対応する言葉がBINAURAL=二つの耳を表します。これ はヘッドフォンで聴くのが条件です。
さて、もう充分に話しがややこしいことになり始めたのだが、スピーカーで聞くべき音は、基本的にはスピーカーと同
じ位に左右に離したマイクロフォンで録音されている事が条件。そうするとバイノーラルはどのような条件で録音する かというと、人間の頭の形に耳をつけその中にマイクを仕込んだヘッドマイクを使う事になる。見たことが無い?大昔 ビクターから出たことがありますが、誰も覚えてないでしょうねぇ。え?じゃステレオはヘッドフォンで聞くのは、はい本 当は間違いです。
バイノーラル録音された音源をヘッドフォンで聞くと恐ろしいくらいにはっきりした定位を楽しめます。しかし主に後方定
位にその強みを見せるため(人間の耳たぶがそういう構造のため)あまり流行りませんでした。小生は、ゲームに使 えないかと考えてますが。そんな定位は、ステレオでできんかなぁちゅう話から入りましょうか。
ステレオフォニックは、二つのスピーカーで音場を作りその中で聞くわけです。ヘッドフォンは、音色やエネルギーバラ
ンス等をチェックする場合に使えますが、立体音響は再生できないわけです。この音場再生がピュアオーディオに於 いて一つのヘソなのです。所が、バイノーラルでは絶対に二つのマイクでしか録音できない構成なのに比べ、ステレ オはマルチチャンネルテープレコーダやミキサーのおかげでパンポットでの定位合成、時間差録音による合成などで 位相をぐしゃぐしゃにできるわけです。
二本マイクでの同時録音(当たり前の事なのですが)を聞くとびっくりするような音像が聞こえます。えー今我が家に
そんなCDがあるかどうか探したら....ありました。O'HENレベル、IS−001「ふたつの舟」下田逸郎&桑名晴子。 自主 制作で飲み屋で生録、制作費只同然という好条件が時間差、マルチチャンネルミキサーの介入を許さず、極めて 生々しい音が聴けます。
筆者の先輩が、ソ連製のレコードを集めていたのもそのような条件で録音された物が多かったからという理由でし
た。今後ろで、宇多田ヒカルの「ファーストラブ」が流れています。こんな音だったら、シビアなオーディオシステムより ヘッドフォンで聞いた方が良いようです。ミキサーやエフェクタ-をバリバリ効かせた録音を聞くと、明らかに制作者側 がいろんな奇怪をいじりながらヘッドフォンでモニターしている姿が想像できます。
つまりは、正しい音の羅針盤の一つとして、正しく録音されたレコードなりCDが必要なんです。
あなたはそんなソフトを持っていますか?
ラックスとしてはL-580以来、30万円以上のプリメインアンプは久しぶりの商品になります。
空間の表現は、スピーカーの面に対して奥に広がる奥行きのある音場を作るアンプで、空気感やホールの質感など
は非常に綺麗に出るが、その反面ここの楽器の音が薄く感じてしまう。位相もそれなりに良好でよくまとまったアンプ なのだが、贅沢を言えば本来楽器の持つダイナミックさがもう少ししっかり出て欲しい気はする。
女性ボーカルは嫌みなく綺麗に聴かせる。ソナスファーベルのスピーカーと組み合わせると、中域から中高域の表現
が助長されて、面白い。
スピーカーを選ぶ傾向はあまりないが、全体としてはおとなしい方に引っ張られる。同社のセパレートほどのダイナミ
ックさはないが、アダルトな雰囲気であまり刺激的な音を好まない人には良いアンプ。
民生用CDレコーダーの同社2世代目。CDプレーヤーとしての音質にもこだわっっているということで試聴してみた。レ
コーダーとしては、同軸デジタル入力のみのチェックに限って行った。今回アナログ入力時のテストは行ってないの と、個人的にダビングしたいレコードもあるので、アナログ入力は次回レポートを追加することにします。
まず、CDプレーヤーとしての実力だが、マランツの現行CDの中で比較してもお得な感じはある。レコーダーという性
質上、録音したソフトと元のソースとの音質差が小さい方が望ましい。言い換えれば、素直に録音できて素直に再生 出来るのが理想になる。そのせいか、同社のCD-7を除いたプレーヤーと比較しても変な癖も少なく、この価格帯の CDとしてもまずまずのでき。多少音が軽いのと奥行き感が薄くなるのは、このクラス共通の部分なので仕方がない が、定位は良好。録音時にも言えるのだが、CD-Rのメカニズムのせいなのか、他社のCD専用メカと比較すると多少 ジッターは多い感じで、少し音に荒さが残る。しかし良い意味で元気もあり、もう少し音抜けが良いともっと良かった のだが、全体のバランスの良さと音の出方には好感が持てる。
次にレコーダーとしてだが、かなり素直な音で録音される。操作性も良好。つないだデジタルケーブルやトランスポー
トの個性もしっかり出ていて、デジタル入力時の質は高い。録音用ソフトはフィリップスのソフトを使ったが、録音したソ フトを他のプレーヤーでかけても、オリジナルのソフトよりジッターが少し増える程度でかなり忠実に録音されている。 この辺のできは、パソコン用や初期の民生機とはジッターの増え方や録音の忠実度とってもかなりグレードが違う。 ただし、送り出しのデジタルアウトの質やデジタルケーブルの質にも左右されるので、この部分は多少なりとも贅沢 はしたい。
これで、アナログ入力時の音が良ければかなりお買い得品だと思うが。
次回、アナログ入力時のレポートをお待ち下さい。
「昔はよかった」といえば、年寄りの繰言である。いやそれでも言うぞ!今回はそういうわけで、年寄りの繰言であ
る。
まずは昔のオーディオ評論家である。なんか偉大な星から落ちていったような気がするが、岩崎千明氏、瀬川冬樹
氏、荻昌弘氏。この頃の生き残りは、パイプのS氏、自作のN氏位になってしまった。ステレオサウンドの礎を築いた のは、瀬川冬樹氏だろう。JBLに対する激しい思い入れ、それに対応する美しい文章。音楽やカメラにも造詣が深く、 文化としてのオーディオを語ると、やはりこの人の右に出るのは身を滅ぼす元。
岩崎千明氏は、決して自作をすることが好きなわけではなく、音を求めて自分のために自作をやってらして、その必
然性、理論の一般性、読みの正当性は、追随を許すことなく夭折された。
荻正弘氏はオーディオ評論家としてはあまり数は多くないが、映画評論家が本職で、月曜のTV洋画番組の司会、
料理番組のレポーターとしても活躍された方である。その評価基準は見事なまでにコスト・パフォーマンスに置かれ て、もし存命なれば是非にでもDynaudioの音を聞いていただきたい人の一人である。その法外な価格を承知で、氏 がDynaudioの音に仮借ない評価を与えることができればどの点をついてこられるか、今でも興味がつきない。
さて今の評論家である。いや決っして今の評論家諸氏が皆よくないなどと言うつもりは絶対無い....きっと。
「プリアンプあるいは、プリメインアンプにはトーンコントロールがあるべきで...」U氏の発言である。しかしU氏は、ご自
分でアンプの製作を行っており、そのご自身のプリアンプには、トーン・コントロールがついていない。愚考するに彼 は、その回路設計にまったくの知識が無いのでは?そんな奴がアンプ作っていいのか?
そしてこれは、あるステレオのカタログに登場したS氏の広告である。このステレオは、かなり小型のスピーカーと思
われるものが、プリメインアンプ、MD、CDプレーヤーの一体型とセットになったラジカセに似た構成で、たくさんのクラ シックのCDと一緒に購入できる初心者にやさしいステレオなのだそうだ。S氏の言葉を借りると「マニアも納得する 音」なのである。CDが100枚以上ついて、20万円のラヂカセに良く似たステレオがである。最近の彼のSS誌での 機器の価格と評価を考えると、ものすごぉぉぉぉぉくお買い得!うーんオーディオの秋である。
SACDがデビューしました。この秋にはDVDAもデビューを控えてオーディオ業界もなんとなく活気づいているようです。
SACDプレーヤーの一発目は、開発元であるソニー製品のみ。他社は来年リリース予定のようで、年内、しかも秋ま
では、次世代オーディオ・フォーマットはソニーの独壇場と言うわけです。ソニーも気合全開。社長も対談に登場する のも肯けます。
ところが、この気合に水をさすものがあります。ソフトです。
CD開発にあったては、ソニーとフィリップスの共同開発ということで、ソフト面でもソニーレーベルだけでなく、ポリグラ
ムのソフトもCDとしてリリースされ、CDという新しいフォーマットの普及に大きく影響したと考えられます。SACDも開 発にフィリップスが携わり、今回もソフト面でのバックアップがあれば良いのですが、残念ながらフィリップスがソフト部 門をシーグラムに売却してしまったために、このフォローができません。これはかなり厳しいのではないでしょうか? SME(ソニー・ミュージック・エンターテイメント)もそれなりに努力はしているようで、第1回リリースでは13タイトル、7 月には11タイトル、8月には8タイトルとコンスタントには出してきます。しかし問題はこのソフトの内容。大半がクラシッ クとジャズ。
さて、クラシックを愛好される方の中で、SMEのソフトを聴いている人がどれだけいるでしょう?ジャズを愛好されてい
る方の中で、SMEのソフトを聴く人がどれだけいるでしょう?そして、実際SMEの売上の中で、クラシック部門とジャズ 部門の占める割合がどれほどあるのでしょう?端的に言うと、売れないソフトを出したところで、ハードの普及はとうて い望めないということです。
確かに、音楽愛好家ではないオーディオ・ファイルが買いそうなソフトのラインアップだとは思いますが、もう少しSME
の売れ筋をリリースしても良いのではないでしょうか。洋楽部門はいいソフトをたくさん持っているし、クラシック部門だ って2500万枚をセールスした、あの「タイタニック」のサントラがあるじゃないですか。それなのに、リリースされている 売れ筋といえば、槇原敬之のアルバムだけ。次回リリース予定はなんとPUFFY!.....確かに売れてはいるんで しょうね。しかし、邦楽を蔑視するつもりは毛頭ありませんが、少なくともこの人たちのアルバム買う人が、50万円も 出してプレーヤー買うのでしょうか?ソニーのつもりがさっぱりわかりません。それに、SACDのホームページは個別 に設けてはいるものの、新譜の情報更新が全然できてません。気合いが入っているのはハードのソニーだけで、 SMEは片手間といった感じがします。こんな調子だと、DVDAが出た時にまたソフト面で負けて、ベータの二の舞にな りそうで心配です。DSDフォーマットはとても良いフォーマットなので、ソフトによる敗北というつまらない負け方はして 欲しくありません。ソニーはソフトの重要性を、ベータやプレイステーションでいやというほど知っているはずなんです けどね。
SMEの充実したソフトのリリースと、他のソフト会社からの火急なSACDリリースを期待します。(コロムビアからの2枚
だけじゃ寂しすぎます。)
今回当初、SONYのスーパーCDネタでも書こうかと思ったのだが、雑誌がこの話題で持ちきりなのでパスすることに
した。
ステレオサウンドを読んでいて、SONYの出井社長の対談までありちょっとびっくりしたが、それだけ期待も大きいとい
うことだろう。
と言うことで今回次回と、他の新製品ネタで行こうと思います。
前モデルのA-BX10同様、プライマーと同じ工場で生産されている。音の感じは多少プライマーとは変えてあるようだ
が、今回は前モデルの様に高域の荒さもなく、音質はお勧めできるアンプなので、紹介することにした。
実行出力は80W+80W(8Ω)のBTLアンプで、中低域から低音かけての安定感と解像度は、この価格帯の中では突
出している。同じ価格帯のメジャーな国内ブランドアンプが、主に中低域から下が膨らむ傾向が多いのに、このアンプ は珍しく中低域から下が芯もあり、しっかりしている。前モデルは中高域がかなり暴れていたせいもあって、あまり良 いイメージが無かったのだが、今回は随分イメージが変わった。
ソナスファーベルやディナウディオ等のスピーカーには相性が良く、ディナウディオではCONTOUR3.3クラスまで十分ド
ライブできるのは魅力。TEACの嗜好が反映しているのか、作っているところが日本向けというところで意識している のか良く分からないが、全体として国内ブランド共通の、少し明るさを欠いた部分があり、ここはもう少し考えてほしい ところ。折角海外で作っているのだし、素性もかなり良いアンプなので、もう少しオープンに元気の良い音に仕上げて 欲しい気もする。
楽器の音などは、かなり生っぽい感じが良く出るので、ただひたすら綺麗に聴きたい人には向かない部分もある。
しかしながら、ソナスファーベルやディナウディオ等のスピーカーを使用している一般家庭で、中低域から低域の解像
度や膨らみに不満を持っている所にはかなりお勧め。
勿論、TEACが輸入しているとこともあるが、タンノイとの相性も悪くは無い。
一般的にアンプでTEACと言うとイメージが弱く、ほかのメジャーブランドのアンプの影にあって目立たないが、この価
格帯では非常に面白い商品である。
ゴールドムンド久しぶりのプリメインアンプ。前モデルとの機能面の違いは、まずリモコンが使える様になったこと。し
かし音量調整とミュートだけしかない。リモコンをつけるなら、セレクター機能位は欲しかった。
回路面ではSRパワーシリーズ共通のJOBサーキットを搭載。全体にクールな鳴り方はゴールドムンド商品に共通し
ているが、前モデルのプリメインやMIMESIS 8.4や9.4以前の音からは、現行ゴールドムンド商品の鳴り方は随分変 わった。低域の量が多くなり、以前モデルの様なタイトで締まった感じでは無くなり(あくまでGLODMUNDの中での比 較で)、少しゆったりした低域の表現になった。非常にまとまりの良い音にはなったが、昔からの個性の強い GOLDMUNDの音になれている人には、少し物足りないかも知れない。しかし他の国産アンプや海外品の中で比べる と、未だにタイトでクールな音には違いない。
実行出力は150Wchでそれなりに駆動力も備えていて、負荷インピーダンスの低いスピーカーにも十分対応が可能。
出力と内容からから考えると一番安いSRセパレートを買うよりもお買得な感じがする。GOLDMUND入門用には程よ い一台。
現行SR MONOとPRIのアップバージョンモデル。これも新製品で従来のモデルより更にスピーカーへの対応力が上
がった。
プリの方はモジュールがA2になりよりすっきりとした音になりスピード感も上々。パワーの方もより駆動力が上がり、
少々大型のシステムでもきっちりとウーファーを制動する。音色も現在のGOLDMUNDラインアップの中にあって、どち らかと言うと8.4や9.4以前のGOLDMUNDの音作りに近く、タイトな中低域で、全体的に歯切れ良く音離れがよい。現 行のGOLDMUNDのアンプの中では、以前のイメージが良く出た商品。
最近のGOLDMUNDアンプはゴージャスではあるが、面白みではいまいちだったので、この手の音がするアンプは久
しぶりに快感。
決して安くは無いが、旧GOLDMUNDの音が好きな人には、はずさないセパレートアンプの登場。
次回はTAG MCLARENのプリメインアンプ60iRvとCDプレーヤーCD20R、
ラックスマンのL-509Sの予定。
と称して総立ちタテノリのお祭り騒ぎに行く位なら、我が家でステレオを聴いていた方が、音は良い。これは断言でき る。ジャズのコンサートなんかよっぽど探し回らないと生は望めない。生を楽しめるのは、やはりクラシックということに なる。あなたの町の交響楽団だ。東京だったらN響、シティフィル等、月に4回以上の定期がある。大阪だったらあの 朝比奈率いる大フィル。あぁうらやましい。吉田苑のある福岡だって、窮境・・もとい九響がある。オケはウィーンやベ ルリンだけじゃない。地元のオケを聴きに行くべきだと思う。「俺の住んでる近くにはそんなのはない」とおっしゃる方 には、大学オケが駅弁のように各地方都市にはあるはずだ。 ウィーンやベルリンでなくとも、一流のオケが来演したときに、あなたはそのオケの素晴らしさを実感できるようになっ ているだろう。そして最後に、日ごろ通ったホールの特性を知っている貴方は、安くて音の良い座席番号を知っている はずだ。そしてその音が、生の音なのだ。それが、自宅のステレオに及ばないとすれば、何故かを考えてみるのも、 オーディオを知るのに、自分の耳を鍛えるのに、有効な手段だと考えてほしい。 PM-14が、うまく使えばそれなりに良かったので、少し期待を込めて聴いた。 CONTOUR 3.3、ケーブルはAC DESIGNのWTCシリーズを使用。せっかくテンプ・メーターがついているので、暖まる までしばらく鳴らし込む。 -0に変更。試聴。.....?電源ケーブルを変えて聴けるようにはなったが、物足りない。悪い音ではないし、良く整 った鳴り方だが、ただ鳴っているだけといった感じ。PM-14の方が、この時点で結構楽しく鳴っていたので、ちょっと 期待はずれ。次に、PM-14ではよろしくない組み合わせだった、同社のProject D-1を一応つないでみる。試 聴。.....?!今度は大丈夫みたいだ。PM-14の時みたいにコンプレッサーをかけたような音にはならない。これ は大きな進歩だ。伊達にSACD対応と謳っているのではなさそうだ。だが、鳴り方そのものは変わらず、今ひとつ元気 がない。今の国内オーディオ業界を象徴するかのような、低く垂れ籠めた雲を連想させる音だ。残るはバランス。PM- 14では使えた物ではなかったので、全く期待せずに接続、試聴。....!!これが一番まとも。バランスの良さが良 く出ていて、芯のある落ち着いた低音を聴かせてくれる。しかもエネルギッシュ。ただ、音の鮮度が今ひとつ出ないの は、アンバランスの時と同じ。だから快晴とまではいかないが、普通の曇り空くらいにはなったかなという感じだ。 アンプというのが評価できる。◎に至らなかったのは、やはり音の鮮度。とても整って、落ち着いた音なので、雑誌等 ではおそらくとても評価は高くなると思われるが、もう少し生の音が持つ鮮度感が欲しかった。 PM-14が、うまく使えばそれなりに良かったので、少し期待を込めて聴いた。 CONTOUR 3.3、ケーブルはAC DESIGNのWTCシリーズを使用。せっかくテンプ・メーターがついているので、暖まる までしばらく鳴らし込む。 -0に変更。試聴。.....?電源ケーブルを変えて聴けるようにはなったが、物足りない。悪い音ではないし、良く整 った鳴り方だが、ただ鳴っているだけといった感じ。PM-14の方が、この時点で結構楽しく鳴っていたので、ちょっと 期待はずれ。次に、PM-14ではよろしくない組み合わせだった、同社のProject D-1を一応つないでみる。試 聴。.....?!今度は大丈夫みたいだ。PM-14の時みたいにコンプレッサーをかけたような音にはならない。これ は大きな進歩だ。伊達にSACD対応と謳っているのではなさそうだ。だが、鳴り方そのものは変わらず、今ひとつ元気 がない。今の国内オーディオ業界を象徴するかのような、低く垂れ籠めた雲を連想させる音だ。残るはバランス。PM- 14では使えた物ではなかったので、全く期待せずに接続、試聴。....!!これが一番まとも。バランスの良さが良 く出ていて、芯のある落ち着いた低音を聴かせてくれる。しかもエネルギッシュ。ただ、音の鮮度が今ひとつ出ないの は、アンバランスの時と同じ。だから快晴とまではいかないが、普通の曇り空くらいにはなったかなという感じだ。 アンプというのが評価できる。◎に至らなかったのは、やはり音の鮮度。とても整って、落ち着いた音なので、雑誌等 ではおそらくとても評価は高くなると思われるが、もう少し生の音が持つ鮮度感が欲しかった。 のピンポイント再生を取るか。(意外と思われるかも知れないが、安価で手軽なシングルコーンであればこそ、マルチ システムでは味わえない、位相と定位がしっかりした再生が可能なのである。)諦めの悪い事を承知で、38cm同軸 2way等という更に犠牲を強いるアイデアも出てくる。 やバネを許容して気になる音が出ないと自分を偽るか、居住空間と家族の白い目を浴びながら重厚長大ガチガチ喧 嘩上等システムを試してみるか。あるいは、全てを諦めずに音場だけを割愛して、ヘッドフォンの呪縛に身を委ねると いう手も残されている。 足が何処にあるかを知らないでこの趣味の大海に漕ぎ出すことは、無謀というしかない。 自分の耳が何を必要とし、何を不要としているのかを把握しよう。無駄のない選択、的確な判断、揺るぎない決断と まではいかないにしても、暗黒のオーディオ地獄の中に、一筋の光を見いだすことができるだろう。
今回は先日1月23日と24日に行われた47研究所の試聴会を元に、
47研究所のトランスポート、DAC、アンプについてのコメントです。
木村氏が当店に入られたのが23日のお昼頃でしたので、来店前の午前中はケーブル等を含め、当店が通常リファレ
ンスで使用しているシステムのアンプと、DACのみ47研に変えて試聴。試聴したソフトは、音楽ジャンルを問わず、お 客様の試聴盤から日頃店でよく使うソフトまで、かなり多くの量をランダムに試聴していますから、コメントが大まかな 物になっていますがご了承下さい。
23日午前中のシステム 23日夕方以降のシステム
従来の#4706よりも電流容量がバージョンアップした#4706Cだが、さすがにConfidence 5のウーファーを駆動する
には物足りなくて、すぐにスピーカーをCONTOUR3.3に変更。以前の#4706では、Contour 3.3のウーファーもドライ ブ出来ず、Contour 3.0以下のモデルを合わせていたが、4706Cになって、どうにか3.3もドライブ出きるようになり、低 音域の階調もしっかり聞き取れる様になった。DACの#4705は、午前中のシステムでMARANTZのProject D-1と比 較試聴すると、堅さのないデジタル臭さくない音だが、軽い感じ。全体の楽器の線の太さや実体感では、Project D- 1の方がかなり上の感じがする。
勿論これは好き嫌いのレベルでもあるだろうが。
お昼頃に木村氏も入店されたので、バトンタッチして、持ってこられたトランスポート#4713を接続。これでケーブルと
スピーカー以外は47のシステムとなった。
全体の印象としては、さほど変わらないのだがより階調がしっかりして、よりフラットな音質になる。このころから、ぼ
ちぼちお客様も来店され始めたので、本格的に試聴会に入り、質問や試聴をしながらケーブルを少しずつ変更してい たので、ケーブルも含めて47研のメインシステムに完全移行。23日は午後7:00に試聴会を切り上げたので、自分の 試聴は翌日の朝からになった。
翌日、デジタル、ラインケーブルを0.4mmの単線と非磁性体プラグ(47研のOTA KIT)を使用した物に変更。スピーカ
ーケーブルも0.4mm単線に変更して試聴。前日の試聴時より、更に全体の密度が上がり、立ち上がりも早く、音の芯 もしっかりしていて誇張感のない自然な音になっている。聴いていてストレスがないので、音楽がすーっと耳に入って くる。やはり、トータルでのシステムづくりを目指しているので、当たり前と言えば当たり前なのだが、商品開発常態 に近いほど良いようだ。これは、木村氏と話をするとよく分かるのだが、オーディオが心から好きで、情熱があり、自 然体で頭が柔らかく、音が良くなるのなら何でも試してしまう木村氏の人柄からできる音なのだ。(これは、お世辞で はありません。)
しかしながら、47研の試聴室とは鳴らしているスピーカーも違うし、広さや諸々の条件も違うので、一概にこれが完全
と言うことでは無いのも事実なので、試聴して気になる部分を二三書くと、比較的大型のスピーカーを使用しても、横 方向の音場の広さが少し狭く感じる。高さは十分でているのでセッティングの問題もあるが、より音場を求めるのであ れば、小型スピーカーの方が望ましいかもしれない。それから、アッテネーター式パワーアンプ特有の癖か、音はす っきりしているのだが奥行き感が出にくい。(出来の悪い国産のセパレートアンプやプリメインに比較すると遙かに出 るので、誤解の無いように。)奥行き感に関しては、やはりプリアンプが欲しいところで、今のところ予定はないそうだ が、実験はしているらしく、いずれは出したいと言うことだった。
47の商品全てがハイスピードなので、大型、小型に限らず、ハイ・コンプライアンスのユニットで、スピードについてこ
れるだけのスピーカーでないと良さが出にくい。
以下、個別にコメントすると
ハイスピードアンプなのは言うまでもないが、非常に入力(DACやトランスポート)やケーブルの差を良く出すアンプ。
癖が無いのが癖と言ったところだが、悪く考えると神経質なので、何でもそうだが、商品の持ち味を理解せずに使うと 悲惨な目にあうことになる。CD、スピーカー、ケーブルをある程度、吟味しないと駄目だし、外すと薄っぺらい音になる 可能性もある。
単体で使うには、多少なりとも技量のいるアンプ。
良い。非常に良いのが分かる。アンプ同様非常に素直な音でノン・オーバーサンプリングとフィルター・レスが本当に
よく効いている。ただ、欲を言わせていただくと、エネルギーがもっと欲しい。音量が大きいとか小さいとかではなく、 躍動感と言うか熱が足りない。(表現が抽象的で申し訳ない。)木村氏の狙うところとは、外れるのかもしれないが。
静寂。このトランスポートから出てくる信号は静寂。アンプやDACと同じく非常に素直で、情報量も多い。フラットで膨
らんだところもなくデジタル出力は良質、予価30万円〜35万円だが#4705と共有電源が必要なので実質45〜50万 円。ご存じ無い方も多いかもしれないが、トランスポートでも奥行き感は変わるし、全体のスピード感も大きく変わる。 そう言った点では、現在の国産トランスポートとは音の出方がちょっと違ってスピードがある。
以上が今回47研究所のフルシステム(スピーカーを除く)を試聴してのコメントですが、ともかく木村氏の人柄や、今
まで培ってきた感性の高さには、いつお会いしても感銘を受けます。商品のコンセプト(音質やデザイン)にも木村氏 のセンスの良さがほんとによく出ていて好感を持てます。
もっと他にもこんな試聴会が出きるメーカーが増えてくれれば、更にオーディオも楽しくなるのですが。
次回ネタ、現在考え中でございます。
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